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競争相手に負けてたまるか!

競争基本戦略

既に、戦略目標についてお話をしてきました。――「いかにして自社の事業戦略の目標を見極めるか?」――ということについてです。戦略目標が定まれば、次は戦略そのものを作りこんでいくことになります。何分、競争の激しい世の中ですから、「勝てる戦略を如何にして作るか?」ということが重要になります。

実際のところ、企業の「勝ちパターン」は、大きく類型すれば3つしかないんです。それは:

  • コストリーダーシップ戦略(=コスト優位を築く)
  • 差別化戦略(=付加価値で差別化する)
  • 集中戦略(対象市場を絞り込んで優位を築く)

です。これが、アメリカの著名な経営学者、マイケル・ポーターが提唱した3つの勝ちパターンです。
企業は、概ねこの3つのどれかに当てはまる競争戦略を採って、競合他社を出し抜き、打ち勝とうと考えていることになります。

通常、これらの競争戦略に対しては、徹底した戦略の特化が求められるんですが、欲張って、それぞれの良い所を組み合わせようとして、結局中途半端な戦略になって失敗することもあります。

しかし、稀にこのうち2つを上手く組み合わせて競争優位を構築した例もあります。キャノンのコピー機は独自の技術革新によって、コスト面でも品質面でも他社を凌駕しました。当時のキヤノンの開発投資に対する英断によるものだったのですが、非常に稀有な成功事例と言えます。


それでは、3つの勝ちパターンを順に見ていきましょう。

コストリーダーシップ戦略

コストリーダーシップ戦略とは、経験曲線をベースとした競争優位性を武器とする戦略を言います。つまり:

  • 事業規模を最大化し
  • 単位あたり生産コストの低減をはかり
  • コスト面で優位に立つ

というものです。経験曲線についてはVol.30で触れていますので、そちらも参考にしてください。

この戦略は、主に二つの取り組みによって成り立っています。

一つは「コスト削減に対する取り組みを追求する」ことです。そのために、ローコスト生産のための積極的な生産設備への投資、徹底したコスト管理、作業フローの簡素化、調達マネジメントなどが周到に実施されます。

もう一つが、「規模拡大に対する政策を徹底的に展開する」ことです。具体的には、攻撃的な低価格政策や大量販売のための全方位型チャネル展開、積極的なプロモーション活動などがあります。

マクドナルドは、世界統一購買といったしくみで原価低減を徹底しています。また、店舗オペレーションも標準化を図り、25,000項目にもわたるマニュアルを徹底しているといいます。しかし、一方では、徹底した駅前一等地へ出店し、マス広告に対しても大量に投資しています。集客力を上げ、経験曲線を低減させる努力は半端ではありません。

この他にも、コストリーダーシップ戦略によって製品の価格を低く抑えて市場に投入し、シェアを拡大していった例として「ユニクロ」(ファーストリテイリング社)があります。ユニクロはその目標を「市場最低価格での良品提供」に置き、高品質の商品を低価格で提供するために、アイテムの絞込みや生産プロセスの管理など、徹底的なコストダウンに取り組んだ企業です。

しかし、どんなに徹底したところで、コストがゼロになることはありえません。「ウチはコストゼロだよ」なんて言っている人が居るならば、それは、「何もしていない」と宣言しているようなものですね。

マクドナルドも、ユニクロも、乾いた雑巾を絞るといわれるコスト低減努力とあわせて、必要な所には投資を惜しまない、まさにコストリーダーシップ戦略です。

この両面の取り組みが実現できれば、「コストダウン」と「スケール拡大」がマッチし、グッドサイクルが回り始め、他社が追随できない圧倒的なリーダーシップを発揮できるようになります。

しかし、コストリーダーシップ戦略にも限界があります。比較的価格に敏感ではない顧客層や競合他社が圧倒的な差別性を有している場合には、大きな脅威にさらされることになるので、環境分析においてこれらをしっかりと確認しておく注意も必要です。

差別化戦略

これは、自社の製品やサービスの付加価値に着目して、他社と差別性を確立しようとする戦略です。ポイントとしては、技術や品質、機能面、イメージ、サービス等など・・・、様々な付加価値において差別化が可能となります。

このため、事業戦略として、「自社はどの付加価値において差別化を図るのか?」という意思決定が明確になっていなければなりません。それも、常に顧客から見て重要と感じられる付加価値部分に着目する必要があります。

差別化によって顧客獲得ができると、顧客の価格に対する感度が鈍ってきます。言い換えると、明確な差別性によって、顧客は喜んで高価格の商品でも購入しようと考えるということです。そして、それがブランドロイヤルティに、さらには顧客の囲い込みへとつながり、高収益性の実現につながります。

チャネルに対しても、差別性が高マージンをもたらし、チャネルからの交渉力を弱めることにもなります。

一般に差別化を図るためには、研究開発、生産工程、マーケティング機能やサービス機能などに大掛かりな投資をしなければなりません。つまり、コスト優位のポジションと両立させることは難しいと言えるのです。だからこそ、前回書いたキャノンの事例は稀なケースだと考えられます。

しかし、差別化と一口に言っても、そんなに簡単な話ではありません。「差別化のポイントは?」という問いに対しては、多くの方が「○○が差別化のポイントです」と応えてくれます。しかし、その次に「では、○○は他社には真似できないのですね?」と聞くと、明確に答えてもらえる場合ばかりではありません。

自社が、ある要素を差別化のポイントに据えて戦いを挑んだときに、もし、業界内に自社よりも強い企業が居たら、差別化に対して「同質化」という模倣戦略で応戦してきます。これは、業界地位による戦略の定石でもあるのですが、模倣の容易な差別化では、実際に優位な戦略とはなり難いということです。

さらに、サプライヤー側の勝手な論理で差別化の視点を考えるのではなく、生活者、顧客の側から発想された視点で差別化のポイントを考えることが重要です。開発先行で生まれた差別化のポイントであっても、それが顧客の視点で何故差別化要素となりうるのかを分析する必要があるということです。

差別化戦略においては、これまでの市場調査などから出てきたデータや結果をそのまま見るだけだはなく、データの背後に隠れている顧客の意志やストーリーまで読み込むことが重要になります。

集中戦略

最後の「集中戦略」は、特定の領域を対象として資源を集中するやり方です。その領域として、製品に集中したり、顧客群に集中したり、地域に集中したり・・・、様々な領域に集中することができます。
集中することで何が良いかと云うと、経営資源投入の効率を高められるため、広いターゲットを狙う競合他社に対して、差別性高められることです。

集中によってコスト優位を築く戦略は「コスト集中戦略」と呼ばれています。これは、特定の製品ラインに集中して、その生産効率の高上に資源投入を集中することで実現したり、特定の顧客群に製品投入する際に、対象顧客が必要としない付加価値を殺ぎ落とすことでコスト優位を実現したりします。

一方で、集中によって差別化を図る戦略を「差別化集中戦略」と呼んでいます。これは、集中によりキーとなる付加価値を絞り込み、絞り込んだ「付加価値」に対して研究開発やマーケティング投資をすることによって、差別化を実現する戦略です。

集中戦略の最大の脅威は、絞り込んだ領域が市場として魅力を失った場合、一気に事業採算性を失うことです。

例えば、真空管がトランジスタの出現によりその市場を大きく奪われた例などがあります。身近な例で言えば、CDの出現により、アナログレコードが衰退したというのも同様の事例です。どちらの例も、完全に市場が消えたわけではありませんが、何れにしても、技術革新によって大きく市場の構造が変わっています。

代替品や代替技術の出現、または顧客ニーズの急激な変化は起こる物と考えるべきです。

自社がどの様な戦略で挑むにしろ、市場調査やマクロ環境の動向など、常に先を見据えた分析を心がけ、如何なる場合にも対処できる戦略オプションを念頭に置いておく必要があります。

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