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成長のシナリオを描く

さて、これまでに経営戦略とマーケティング戦略について考えてきましたが、そろそろ「戦略に関する方向性が明確になってきた!」という方も多いと思います。「自社の戦略目標」を明確にするために、PPMで事業や製品を見つめなおし、投資対象と投資配分を決定しました。

今回は、戦略分析のまとめとして、成長戦略を描くのに有効なツールをご紹介します。

企業は常に成長欲求を持っている必要があります。中には、「現状が維持できればいいょ・・・」なんていう方も居るかも知れませんが、よく考えてみてください。現状維持の戦略は環境変化のなかでどの程度有効なのでしょうか?
如何なる企業であっても、環境を分析した上で、自社の成長を図る戦略を持つべきです。

その成長のためのシナリオを抽出するときに利用されるツールに、「成長マトリックス」というものがあります。とりわけ、PPMの結果、新たな事業の柱として「問題児」を開発しなければならないといった課題に直面したときには、このフレームワークを使って現在の自社に与えられている事業機会を検討することが有効です。

成長マトリックス

チャートとしては、タテ軸に「市場」、ヨコ軸に「商品」をとり、それぞれ「既存市場/新市場」「既存商品/新商品」と分解した単純なマトリックスです。その結果できる4つのセルにあてはまる事業機会を抽出することによって、ヌケモレのないオプション抽出を可能にするものです。

「市場浸透」「新市場開拓」「新商品開発」「多角化」という4つの言葉は、いずれも皆さんが普段接する言葉だと思います。これらはすべて、現在の企業活動が持っている課題です。

市場浸透(既存市場・既存商品)

これまでの従来事業の枠組みの中で成長機会を抽出すると、他社の顧客を奪いシェアアップを図るというオーソドックスな成長が、先ずは思い浮かびますが、それ以外にも、市場全体の規模を拡大して自社の成長を図るという方向性も考えられるわけです。

市場拡大の方法としては、使用頻度の向上、使用量の増大、用途の提案等が考えられます。

例えば、マクドナルドでは一日に何度も利用できる環境を整えるための「朝マック」や、一回のオーダー量をふやすための「バリューセット」をメニューに織り込んで提供したり、単なる食事の場面だけではなく「子供の遊び場」を提供したりすることで、徹底した市場への浸透を図っています。

新商品開発(既存市場・新商品)

既存市場に新商品を投入する戦略では、既存の顧客が既存の商品では満足できないニーズを抱えている場合に有効です。既存の顧客が持っている周辺ニーズまでをしっかりと捉え、新たな商品を投入することで成長機会を得られます。

例えば、ソニーはテープレコーダーで事業を興した企業ですが、その後、周辺ニーズを満たすラジオ、テレビ、ビデオ、カメラとオーディオビジュアルに関連する製品を矢継ぎ早に投入して成長を遂げました。

新市場開拓(新市場・既存商品)

この戦略は、新たな市場に対して、既存商品を投入することで成長を図るやり方です。最も典型的で理解しやすい例は、地理的拡大です。これまで国内のみで店舗展開していたユニクロがロンドンをはじめとした海外出店に積極的に取り組んだ例などは、新市場開拓にあたります。

よく題材として取り上げられる事例で、カップヌードルの話があります。海外へカップヌードルが進出した際に、最初、ヌードルとしてはあまり人気が出なかったそうです。よくよく調べてみるとアメリカでは主食にヌードルを摂る習慣が浸透していなかったんです。そこで、毎食の様に食卓に上る「スープ」として売り出して成功したという話です。これも、既存商品のポジションを変えただけで新市場を開拓したわけです。他にも、非常食として売り出したり、おやつとして売り出したり(ミニ)・・・ポジショニングや既存商品の改良で市場を広げている事例です。

多角化(新市場・新商品)

4つのセルの中で、最もリスクを伴うのがこの多角化戦略です。その理由は、市場面でも、商品面でも、これまでの既存事業とのシナジーが期待できない取り組みとなる場合が多いからです。一般に、新商品開発や新市場開発を経て多角化を図るほうが、リスクが低減できるとも考えられます。

多角化のリスク低減ルート

もちろん、現在位置から最短で多角化を行ってはいけないという事ではありません。

バブル時代には、「とにかく多角化しよう!」という意気込みで多角化路線を歩んだ企業がありました。しかし、事業間のシナジーを考慮せず、しっかりとした戦略を持たずに多角化した企業の中には、その後、事業の整理に莫大な時間と費用を要した事例がいくつもあります。

多角化を進める場合には、その先にあるリスクを十分に検討したうえで、戦略的に進めていくことが重要です。

垂直展開

更に、流通構造上の川上や川下へと展開を図る成長シナリオもあります。たとえば、小売業であったユニクロが製品企画や品質管理といった製造業の機能まで取り込んでいった川上統合や、PCメーカーが小売機能を持ち、直販を積極的に展開している川下統合の事例等が、この垂直展開に該当します。


このように、成長戦略を描く際にも様々な手法が考えられます。今回ご紹介した成長マトリックスは、製品軸と市場軸という二つの切り口から、偏らず、網羅的に成長戦略を検討するためのツールです。思い込みだけで1つの方策に突き進むよりも、網羅的に考えることで、それぞれのメリット、デメリットをしっかりと考察することができます。

理解を深めるためにも、「この先、自社にどの様な成長の可能性があるのか?」という視点で、今一度、考えてみては如何でしょうか?

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