ホーム > スタジオ

お客様は何を買ってくださるのだろう?

以前、「価値の構造」について書きました。このときには、バリューチェーン、サプライチェーンという概念から「価値」といものがどの様に創造されているのか?ということを考えました。この考え方は、企業の生産や流通の構造に焦点をあてた考えがベースになっていました。

製品戦略を検討する際には、そもそも自社の扱っている製品が顧客に与えている価値の構造を明確にしておくことが重要です。そこで、今回は「製品の価値構造」を顧客の視点から捉えた時にどの様な構造になっているのかを考えて見ます。

先ずは、「『製品』とは何を指すのか?」ということを共有しておく必要がありますね。ここでは、「製品とは顧客のニーズやウォンツを満たすために、市場にだされる全てのモノやサービス」と定義しておきます。つまり、車やテレビの様な有形のモノだけではなく、医療やコンサルティングなどの無形のサービスも含むと考えてください。

お客様は皆さんの生産した「製品」を買っている。このこと自体は間違っていません。しかし、もう少し突き詰めてみましょう。お客様は本当にその製品そのものを消費したり、使用や取得をしたいのでしょうか?他の製品、つまり、市場で入手できる類似の製品ではダメだったのでしょうか?

実は、お客様は製品そのものを消費、使用、取得したいわけではなく、製品を消費したり、使用したり、取得したりすることで得られるベネフィット(便益)を求めているのです。製品とは、この「ベネフィット」の集合体なのです。

製品がどの様なベネフィットの集合になっているのかを考える時に有効なツールの一つに、『3層モデル』という考え方があります。P.コトラーはこの考え方を「マーケティング入門」という書籍の中で「製品の3つのレベル」として紹介しています。

製品を構成する3つのレベルとは:

 (1)中核となるベネフィットまたはサービス
 (2)製品の実体
 (3)製品の付随機能

です。

製品の中核をなすのが、そもそもその製品が持っている最も基本的便益です。例えば、ビジネスホテルならば製品の中核は「宿泊する」ことになります。

しかし、「製品の中核」だけでは差別性のある製品戦略は見当たりません。宿泊するだけの施設であれば、何でも良いことになるからです。そこで、その外周に位置づけられている「製品の実体」により差別性のある価値を提供する戦略が多く採られます。

「製品の実体」には、製品の特徴、品質、デザイン、ブランド、パッケージング等が挙げられます。先ほどのビジネスホテルを例にとれば、「駅から近い」ことや「部屋が清潔で広い」こと、「おいしいレストランがある」こと、「従業員の対応が良い」こと、「有名なホテルである」こと等が考えられます。

これらの「製品の実体」により、中核だけではあまり違いの見えなかったホテルに価値の違いが生じ、お客様はその中のいずれか、またはその組合せに惹かれて宿泊してくれます。

その外側のレベルには、「製品の付随機能」があります。この付随機能とは、本来の購入目的である「製品の中核」を消費するシーンではない場面で得られる価値を指します。一般に、信用、配達、設置、保証、アフターサービス等が挙げられます。例えば、ホテルの会員になっていると予約を優先的に受け付けてくれるとすれば、顧客にとっては魅力的なサービスになるという様な機能です。

製品は目に見える特徴だけではなく、様々な価値の集合体としてお客様に訴求しています。ここで列挙される価値の一つひとつが、企業の製品戦略上の差別化のポイントとなるのです。

世界的な工具メーカーである「スナップ・オン」は、鍛錬された素材で工具としての最高の機能を提供していますが、それに加えて「無期限保証」を表明しています。通常の使用でドライバーの先端が万が一欠けた場合などには、購入後何年経過していても、きちんと保証してくれるというものです。このサービスは、自社製品の高い品質を顕示すると同時に、購入時だけではなくそれ以降も顧客に大きな価値を与える付随機能です。

皆さんの会社が提供している製品やサービスの価値構造を、3層モデルで表現してみてください。どの様な価値構造になっていますか?自社製品の価値をもう一度見つめなおしてみることで、新たな差別化のポイントを発見できるかもしれません。

シナプス一番人気!初心者でも安心の必須講座
「マーケティング・ベーシックス」受講生募集!